心地よい違和感
北原ミュージアムで見た資料のお話の続き。
1粒300メートル
グリコキャラメルの箱に記載されているキャッチフレーズ。
グリコ創設者 江崎利一氏が考案した言葉だそうです。
公式HPの記載では、20歳の男性が300m走ると、グリコのキャラメル1粒とだいたい同じ消費カロリーになると説明があります。
ですが、写真の説明通りこの言葉が考案された当時は、語呂合わせの理由もあって「40kgの体重の人が300M走るのに必要なカロリー」となっています。
この説明を見て、体重40kgの人?
…はて?と何か妙な違和感が。
よく目にするのは、「体重60kg」とか、「20歳の男子」が例にされることが多いですよね?
体重40kg。想像するにやっぱり子供ですよねぇ。それも育ち盛りな10〜12歳くらいの児童。
そこで、当時の児童の平均体重って実際はどれくらいだったのかなと思い調べてみました。
グラフを見る限りでは、昭和5年から昭和34年までは40kg前半ですね。
14歳は第2次成長期のまっただ中なので、12歳〜14歳と幅を考えると30kg中版〜40kgぴったりくらいかもしれません。
やはり「40kgの人が」というのは当時の育ち盛りの児童が対象だったといえそうです。
余談ですが、昭和24年から男女の体重が逆転しているのも興味深いです。
たぶん昭和24年以前からすでに逆転への変化は見られているのではと思いますが、特に顕著なのが、24年と26年の間。空前絶後の大増殖と言われた団塊の世代が、昭和22年から昭和26年といわれているので、何らかの関連があるのではと予想します。
ここも後で関係性を調べたいところです。
対して、H28年の14歳の平均体重はどうかというと…
平成28年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)より
男女とも50kg台となってます。およそ10kg差がありました。
食生活の変化とともに、児童の発育に変化が生じたため、「40kgの人が300m走ったカロリーと同じ」という表現は、現代に合わないと判断されたのかもしれないですね。
たしかに時代の背景に合わせて消費者のニーズも変化しますから、定期的に中身を見直すことは大事なことでしょう。
グリコのキャラメルが他と違うのは、おまけの封入を先駆けて行ったこと。
その理由だけでも子供達が対象であることは予想できます。
グリコのキャラメルが発売されたのは1922年(大正11年)で、オマケが封入されたのは1927年(昭和2年)だとされています。
昭和2年といえば、金融恐慌の年だそうで玩具を容易に買ってもらいにくいころだったかもしれません。それでも子供達に楽しみを提供したいために、あえてオマケの封入を開始というのは江崎氏の判断だったのでしょうか。景気が回復するまで計画をずらすこともできたはずですしね。
社名のグリコも、多糖類のグリコーゲン(いわゆるブドウ糖の結合体)をもじっており、グリコーゲンの摂取によってお子さんの病気が治癒したことが由来だそうです。
江崎氏の人柄、当時の子供達への愛情の深さが垣間見えるような気がします。
個人的にはこの場合、「20歳の男子が」というより、「体重40kgの人が」という表現が好きです。
この心地良い違和感を楽しみます。